月額数百円〜数千円のITサービスの請求が、クレジットカード明細に ずらりと並んでいる。誰が何のために契約したのか分からないものもある。 1件ずつは小さいので放置され、年間で見ると数十万円——中小企業のIT支出には、 こういう「静かな漏れ」がよくあります。
ただし、この棚卸しには罠があります。分からないものを勢いで解約すると、 会社のメールやホームページが止まることがあるのです。手順と、 解約してはいけないものの見分け方をセットで解説します。
手順1: 支払いの記録からIT関連を全部書き出す
記憶からではなく、お金の記録から始めます。見る場所は3つ。
- クレジットカードの明細(12ヶ月分。年払いを拾うため)
- 銀行口座の自動引き落とし
- 請求書払いの契約(保守契約はここに多い)
IT関連らしきものをすべて書き出し、次の4列の表にします。
| サービス名(明細の表記) | 何のサービスか | 誰が使っているか | 月額換算 |
|---|
この時点では「何のサービスか分からない」「誰も知らない」が並んで構いません。 分からないものが多いこと自体が、現状の管理状態の診断結果です。
手順2: 3つに分類する
- A: 使っている(担当者と用途が特定できた)
- B: 誰も使っていない(用途は分かるが利用者がいない)
- C: 何か分からない
Bは解約候補です。ただし即断せず「最後に使ったのはいつか・データが残っていないか」 だけ確認してから解約します。
手順3: 「C: 何か分からない」は解約前に必ず調査する
ここが最大の注意点です。分からない契約の中には、 止めた瞬間に業務が止まるインフラ契約が混ざっています。
うっかり解約すると危ないものの典型:
- ドメインの更新費(年1回・数千円程度の請求): 失効すると会社のメールと ホームページが全部止まり、最悪ドメインを第三者に取られます
- レンタルサーバー・ホスティング: ホームページとメールの本体
- バックアップサービス: 止めた事実に誰も気づかず、事故のとき初めて発覚
- ソフトウェアのライセンス(会計・業務システム): 解約すると起動しなくなる、 過去データが開けなくなるものがある
- 複合機・ネットワーク機器の保守: 解約後の故障時に高額なスポット修理になる
明細の表記で検索する、社内で「この名前に心当たりは」と聞く、 過去のメールを契約時の通知メールで検索する(明細の英字表記で検索すると 見つかることが多い)——ここまでやっても正体不明なら、解約ではなく まず専門家に確認してください。
手順4: 重複と過剰を整理する
正体が全部割れたら、次は重複です。よくあるパターン:
- 同じ用途のツールが部署ごと・人ごとに別契約(オンラインストレージが3種類など)
- Microsoft 365 / Google Workspace に含まれる機能を、別のサービスで二重契約 (ストレージ、Web会議、チャットは含まれていることが多い)
- 人数分より多いライセンス(退職者の分が減らされていない—— 退職時の棚卸しとつながる問題です)
- 上位プランのまま(機能を使っていないのに高いプラン)
手順5: 台帳にして毎年見る
棚卸しの成果を「IT契約台帳」(サービス名・用途・担当・金額・更新月・ 解約方法)として残し、年1回、更新月の前に見直す運用にします。 一度作れば、2回目からは差分の確認だけです。この台帳は セキュリティチェックシートの 「情報資産管理」の回答資料にもそのまま使えます。
まとめ
明細からの書き出し、分類、台帳化——ここまでは時間さえかければ自社でできます。 一方で、「この契約の正体が分からない」「解約して大丈夫か判断できない」 「重複をどちらに寄せるべきか」は、環境を見ないと答えが出ない部分です。 明細の一覧(分かる範囲で)を添えてご相談いただければ、危険な契約の 見分けと削減余地の見立てをお返しします。