Netwiz LLC

セキュリティ対策に国の補助金が使えます——「セキュリティ対策推進枠」の対象・金額・注意点

ネットウィズ合同会社 庄司育雄

「セキュリティ対策をやらないと」と思いながら、費用を理由に 後回しになっている——という会社は多いはずです。 実は、中小企業のセキュリティ対策には国の補助金があります。 旧「IT導入補助金」、2026年度から名前が変わった 「デジタル化・AI導入補助金」の中の「セキュリティ対策推進枠」です。

ただしこの枠は、「セキュリティ関連なら何でも補助」ではありません。 対象は特定のサービス群に限られていて、ここを誤解したまま 業者の提案を受けると、「補助金が出ると聞いていたのに対象外だった」 という行き違いが起きます。この記事では、制度の要点と、 発注する側が知っておくべき注意点をまとめます。

なお、制度情報は2026年7月末時点の 公式サイトの内容に基づいています。 締切や要件は変わるため、申請前に必ず公式の最新情報と公募要領を 確認してください。

IT導入補助金は名前が変わりました

2026年度から「IT導入補助金」は 「デジタル化・AI導入補助金」に改称されました。 会計ソフトや受発注システムの導入補助で知られてきた、あの補助金です。 申請枠は次の通りで、セキュリティ専用の枠が独立しています。

  • 通常枠(業務システム・ソフトウェアの導入)
  • インボイス枠(インボイス対応類型/電子取引類型)
  • セキュリティ対策推進枠 —— この記事の対象
  • 複数者連携デジタル化・AI導入枠

補助率と補助額

項目内容
補助率小規模事業者: 2/3以内 / 中小企業: 1/2以内
補助額5万円〜150万円
対象経費対象サービスの利用料(最大2年分

たとえば月額3万円の監視サービスなら、2年分で72万円。 小規模事業者なら2/3にあたる48万円が補助され、 自己負担は24万円——という計算になります(採択された場合)。

最大の注意点: 対象は「お助け隊サービス」だけ

この枠で補助されるのは、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)の 「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に掲載された サービスのうち、IT導入支援事業者が提供し、事務局に登録された ものだけです。

お助け隊サービスとは、ネットワークやPCの異常の見守り、 トラブル時の対応支援、簡易的なサイバー保険などがひとまとめになった、 中小企業向けの監視サービスパッケージです。どんなサービスがあるかは IPAのリストで 公開されています。

逆に言うと、次のようなものはこの枠の対象ではありません

  • パソコンやサーバーの買い替え
  • バックアップ用の機器(NASなど)の購入
  • ウイルス対策ソフトを単体で購入すること
  • 社内のセキュリティ研修や、規程づくりの費用

「セキュリティのためなら何でも実質半額」ではない—— ここが一番誤解されやすいポイントです。

申請の流れ: 「売る側」の事業者が主導する制度です

この補助金は、自社で一から書類を書いて申請するタイプの制度では ありません。サービスを提供する「IT導入支援事業者」が 申請手続きの多くを主導する設計です。発注側がやることは、 おおまかに次の3つです。

  • gBizIDプライムの取得——行政サービス共通のログインIDです。 取得に日数がかかるため、検討を始めたら早めに
  • IT導入支援事業者と一緒に交付申請
  • 交付決定を待ってから契約・発注——決定前に契約したものは 補助対象になりません。もっとも多い失敗がこのフライングです

2026年度のスケジュール

2026年7月末時点で公表されているのは次の通りです。

  • 4次締切: 2026年8月25日(火)17:00。交付決定は10月7日(予定)
  • 事業実施期間: 交付決定〜2027年3月31日
  • 5次以降: 日程未公表。公式サイトで随時更新されます

いまから業者選定を始めて4次に乗せるのは、正直タイトです。 締切に間に合わせるための駆け込み契約は、比較検討を飛ばす 一番の原因になります。無理に4次を狙わず、5次以降の公表を待って 落ち着いて選定する判断も、十分に合理的です。

補助金の前に、順番の確認を

セキュリティ投資には順番があります。お助け隊型の監視サービスは 「事故の入口を狭める・異常に気づく」層の道具です。 その手前にある「守る」層——バックアップ、2要素認証、 退職者アカウントの整理——は、ほぼ無料で今週できることで、 優先度はそちらが上です。補助金が使えるからといって、 この順番を飛ばすのはおすすめしません。 全体の優先順位は小さな会社のIT優先順位の記事に まとめています。

「補助金で実質半額です」と言われたら

営業トークとしての「実質半額」には、2つの確認が必要です。

  • 残りの半分〜1/3は自腹です。そのサービスは、補助金がなくても 導入する価値がありますか
  • 補助されるのは最大2年分です。3年目以降は全額自己負担で 月額が続きます。続けられる金額ですか

この制度は、提案・見積もり・申請手続きがすべて「売る側」で完結する 構造です。手続きを任せられるのは便利ですが、提案の妥当性を 第三者が確認する機会は、放っておくと発生しません。 見積もり自体の確認手順は発注前チェック5つのポイントを、 補助金を使う場合に特有の注意点は 補助金前提のIT見積もりの記事を ご覧ください。

まとめ

  • 旧IT導入補助金は「デジタル化・AI導入補助金」に改称。セキュリティ専用の枠がある
  • 補助率は小規模事業者2/3・中小企業1/2、補助額5万〜150万円、サービス利用料の最大2年分
  • 対象はIPA「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」掲載のサービスのみ。機器の購入やソフト単体は対象外
  • 交付決定前の契約・発注は補助対象外。フライングに注意
  • 4次締切は2026年8月25日。駆け込むより、5次以降を落ち着いて狙う選択もある

「この提案は、うちに本当に必要なのか」「補助金を使ってまで 入れるべきか」——その段階のご相談こそ歓迎です。 当社は機器の販売・工事・補助金の申請代行のいずれでも利益を得ない 中立の立場で、メールだけで「見立て」をお返しします。 業者の提案書や見積もりがあれば添えて、無料相談からどうぞ。