Netwiz LLC

社員がChatGPTに顧客情報を貼っていないか。禁止ではなく「会社のAI利用ルール」を作る

ネットウィズ合同会社 庄司育雄

「うちの会社はまだAIとか使っていないから関係ない」—— そう思っている経営者の会社でも、実際には社員が 個人のスマホやPCで ChatGPT などの生成AIを業務に使っていることが 珍しくありません。取引先への謝罪メールを添削させる、 会議メモを要約させる、Excelの関数を聞く——便利だからです。

問題は使っていること自体ではありません。 何のルールもないまま、会社の把握の外で使われていることです。 個人LINEでの業務連絡とまったく同じ構図で、 これは「シャドーAI」と呼ばれ始めています。

何が起きうるのか

生成AIは、入力した文章をサービス側のサーバーに送って処理します。 つまり入力欄に貼った瞬間、その情報は社外に出ています

  • 顧客情報・個人情報の流出: 「この顧客リストを整理して」と 名簿を貼れば、個人情報を第三者のサーバーに提供したことになります。 個人情報保護法の義務に関わる問題です
  • 機密情報の学習利用: 個人向けの無料サービスでは、入力内容が AIの学習に使われる場合があります(設定や規約によります)。 未公開の財務数値や取引条件を貼るのは、その前提で考える必要があります
  • もっともらしい誤りをそのまま使う: 生成AIは事実と違う内容を 自信満々に出力することがあります。確認せず見積もりや契約文面に 使えば、事故の原因になります
  • 誰が何に使ったか、後から分からない: 個人アカウントでの利用は、 事故が起きたときに経緯を調査できません

「全面禁止」がほぼ確実に失敗する理由

ここで「業務でのAI利用を禁止する」というルールだけ作ると、 LINEやUSBメモリと同じ道をたどります。 便利だから使われているものは、代わりを与えずに禁止すると 隠れて使われるだけで、会社はますます実態を把握できなくなります。

しかも生成AIは、人手不足の会社ほど恩恵が大きい道具です。 禁止で失うものは、リスクよりも大きい。 正解は禁止ではなく、安全に使える線を引いて、堂々と使わせることです。

1枚で決める、AI利用ルールの型

難しい規程は要りません。次の5項目をA4・1枚にまとめれば十分です。

1. 入れてはいけない情報を列挙する

ここがルールの核心です。判断を社員に委ねず、具体的に列挙します。

  • 顧客・取引先の名前が特定できる情報(名簿、連絡先、案件の固有名詞)
  • 従業員の個人情報(評価、給与、健康情報)
  • 未公開の財務数値・原価・取引条件
  • パスワード・アカウント情報の類い一切

迷ったら「新聞に載っても困らない内容か」を基準に。 固有名詞を伏せ字にしたり一般化したりすれば、 大半の相談は問題なくできます。

2. 推奨する使い方を明示する

禁止事項だけのルールは守られません。「これはどんどん使ってよい」を 併記します。文章の下書き・要約・言い回しの改善・Excelや手順の質問・ アイデアの壁打ち——このあたりが安全で効果の大きい定番です。

3. 出力の扱いを決める

  • AIの出力は下書きであって完成品ではない。事実確認は人間がする
  • 社外に出る文章・数字は、必ず人が確認してから使う
  • 法律・税務・医療など専門判断が絡む内容は、AIの回答を根拠にしない

4. 使うサービスを会社で決め、会社のアカウントで使う

個人アカウントの野良利用をやめ、会社が契約したサービスに寄せます。 法人・チーム向けプランは、入力内容を学習に使わない設定が 標準的になっており、管理者がメンバーの利用を管理できます。 月額は1人あたり数千円程度—— サブスクの棚卸しで浮く金額で十分まかなえる規模です。 退職時にアカウントを止められることも、個人利用との大きな違いです。

5. 迷ったときの相談先を決める

「これは貼っていい情報か?」と迷ったときに聞ける相手を1人決めます。 セキュリティの相談窓口と同じ人で構いません。

ルールを作ったら、実態と合わせて見直す

作って終わりにせず、半年に一度だけ見直してください。 確認するのは2点——「ルールが実際の使われ方と乖離していないか」 「新しい便利な使い方が現場から出ていないか」。 現場発の使い方こそ、次の効率化の種になります。

まとめ

  • 社員はすでにAIを使っている。危険なのは利用ではなく、ルールなき利用
  • 全面禁止は隠れ利用を生むだけ。線を引いて堂々と使わせる
  • ルールはA4・1枚。「入れてはいけない情報の列挙」が核心
  • 会社アカウントでの契約に寄せれば、統制と退職時の対応がきく

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