大手企業がランサムウェアで操業停止——そんなニュースが連日のように流れています。 被害は大手だけの話ではなく、取引先の中小企業が踏み台として狙われる と知って、こう考え始めた経営者は多いはずです。
「うちは、誰がITを見ているんだ?」 「詳しい人を雇うべきか。給料はいくら払うのか。 そもそも応募者が本当にできる人かどうか、うちに判断できるのか。 それとも業者に任せるのか。それはいくらかかるのか」——。
この記事は、この一連の問いに順番に答えます。 先に全体の結論を言うと、従業員50名くらいまでの会社では、 専任者の採用が最適解になることはまれです。ただし「では外部に丸投げ」 でもうまくいきません。順に見ていきます。
まず「任せたい仕事」を分解する
「IT担当」とひとくくりにされる仕事は、実際には性質の違う4種類です。
- 日常のサポート: 「プリンタが動かない」「メールの設定がおかしい」への対応
- 管理: PC・アカウント・契約・ネットワーク機器の台帳管理と更新
- セキュリティ: 対策の整備、パスワードやバックアップのルール運用、事故対応
- 判断: 何を導入するか、見積もりは妥当か、いくらかけるべきかの意思決定支援
ここで一度、自社の1週間を思い返してください。 数名〜数十名の会社でこの4つを合計しても、 フルタイム1人分の仕事量になることはほとんどありません。 「仕事量は0.2人分なのに、雇うと1人分の人件費がかかる」—— これが小さな会社のIT担当問題の構造です。
選択肢1: 専任者を雇う場合の費用と現実
それでも雇うなら、費用の目安はこうなります。
- 給与相場: 実務経験のある社内SE・情シス人材の求人相場は、 地域や経験にもよりますが年収400万〜600万円が目安です。 セキュリティに強い人材はさらに高く、近年は大手との獲得競争で上がり続けています
- 会社の実負担: 社会保険料の会社負担などを含めると、 実際の人件費は額面の約1.3倍。年収500万円なら年650万円前後です
- 採用コスト: 人材紹介経由なら成功報酬は年収の3割前後、 つまり1回の採用で150万円規模が別途かかります
そして費用以上に重い問題が2つあります。
- 仕事量のミスマッチ: 前述のとおり1人分の仕事がないため、 有能な人ほど物足りなくなって辞めるか、他の業務との兼任になっていきます
- 「1人情シス」の属人化: 社内で1人だけの専門職は、評価者も相談相手も いません。そしてその人に全部が集中した末の退職は、 会社のITが丸ごと止まるリスクになります
応募者が「有能かどうか」を見極める方法
採用に進む場合の最大の難関がこれです。 ITを評価できる人がいない会社が、ITの専門家を面接する—— この構造的な無理は、正面から認めるところから始めてください。 そのうえで、専門知識がなくても使える判断材料はあります。
資格は「最低限の基礎」の証明として読む
基本情報技術者・応用情報技術者などの国家資格は、 基礎知識の証明にはなりますが、実務力の証明にはなりません。 「資格なし・実務が強い人」も「資格あり・実務が弱い人」も普通にいます。 足切りの参考程度に留めてください。
面接では「実話」を聞く
知識を問う質問は、こちらが答えを判定できないので機能しません。 代わりに、過去の実話を具体的に話させる質問が有効です。
- 「前職では何台のPCと、どんなシステムを、何人で見ていましたか」
- 「一番大変だったトラブルと、そのとき何をしたかを聞かせてください」
- 「自分で作る・市販品を買う・外部に頼む、をどう使い分けてきましたか」
実際に手を動かしてきた人の話は、細部が具体的です。 逆に、一般論や専門用語ばかりで具体的な固有名詞・数字・失敗談が 出てこない場合は注意してください。
良いサインと危険なサイン
- 良いサイン: 専門用語をこちらに合わせて言い換えられる。 「それは分かりません」と言える。記録やドキュメントを残す習慣の話が出る。 外部のサービスや業者を使う判断を恥じない
- 危険なサイン: 何でも自分で作りたがる(その人が辞めた瞬間に 誰にも触れない謎のサーバーが残ります)。 説明を求めると専門用語が増える。前職の環境を全部否定する
それでも判断に自信が持てなければ、面接に外部の専門家に同席してもらう という手があります。1回分の相談費用で、数百万円の採用の 目利きができるなら安い保険です。
選択肢2: 「詳しい社員」の兼任は、タダではない
「総務の◯◯さんが詳しいから任せている」——最も多い形態ですが、 これは選択肢というより、選択を先送りした状態です。
- 本人の本業を圧迫し、ITは「片手間」の品質になる
- 正式な役割でないため、記録も引き継ぎも残らず属人化する
- その人の退職・異動で、ある日突然ゼロになる
兼任でいくと決めるなら、せめて役割として正式に任命し、 業務時間の一部を割り当て、この後述べる外部の相談先とセットにする—— ここまでやって初めて成立します。
選択肢3: 外部に任せる場合の形態と費用相場
アウトソーシングと言っても形態はいくつかあり、費用感が違います。
| 形態 | 内容 | 費用の目安 |
|---|---|---|
| スポット対応 | 困りごとが起きたときに単発で依頼 | 1回数万円〜(内容による) |
| 機器の保守契約 | 複合機・ネットワーク機器などの故障対応 | 月数千円〜数万円 |
| IT顧問・情シス代行 | 相談窓口+定期的な点検・管理・判断支援 | 月3万〜15万円程度(範囲による) |
| フル代行 | ヘルプデスクから運用まで一括 | 月10万〜30万円以上 |
専任者の年650万円と比べると、顧問型なら年36万〜180万円。 仕事量が1人分ない会社にとって、数字の上では明確に合理的です。 外部化のメリットは費用だけでなく、1人の知識ではなく組織の知見が 使えること、退職リスクがないことも大きい。
一方でデメリットと注意点もあります。
- 社内に知見が蓄積しにくい: 何を頼んで何をやってもらったかの 記録は自社側で残す必要があります
- 「丸投げ」は業者を選ぶ目まで失う: 全部任せきりにすると、 その業者の提案が妥当かを判断できなくなります。 見積もりの確認ポイントは自社で持っておくこと
- 契約範囲の確認: 「保守契約があるから安心」と思っていたら 対象は複合機だけだった、はよくある話です。 契約の棚卸しと地続きの問題です
規模別の現実解
- 〜10名: 専任は明らかに過剰。日常は自社で回し、 スポット対応+いつでも聞ける相談先を確保しておく形が最小構成です
- 10〜50名: 顧問・代行型の外部委託+社内に「窓口役」を1人。 窓口役は専門家である必要はなく、外部とやり取りし記録を残す係です。 この規模で専任を雇うより、外部委託+窓口役の方が 費用も継続性も安定します
- 50名〜: 専任採用が視野に入ります。その場合も、 外部の専門家に採用の目利きと立ち上げを手伝ってもらうと、 「1人情シス」の孤立を最初から防げます
どれを選んでも、外注できないものがある
最後に重要な点です。雇っても外注しても、 「何を守るか」「いくらまでかけるか」を決めるのは経営者の仕事で、 これは誰にも委任できません。 また、大企業の対策をそのまま持ち込まないのと 同じで、外部に任せる場合も「自社の現状を把握しておくこと」が すべての土台になります。現状把握は セキュリティ簡易チェック7項目で今日始められます。
まとめ
- 小さな会社のIT業務は、合計してもフルタイム1人分にならないことが多い。50名までの会社で専任採用が最適解になることはまれ
- 雇うなら実負担は年600万円超+採用コスト。属人化と「1人情シス」の孤立リスクも織り込む
- 応募者の見極めは「実話の具体性」で。判断に迷うなら面接への専門家同席という手もある
- 外部委託は顧問型で月3万〜15万円程度が目安。ただし丸投げは業者を選ぶ目を失う
- 何を守り、いくらかけるかの判断だけは、外注できない
当社はまさにこの「外部のIT窓口」を、スポット対応と月額の顧問契約の 両方で引き受けています。「うちの規模ならどの形が合うか」 「今の保守契約と重複しないか」といった段階のご相談で構いませんので、 従業員数と現在の体制を添えて無料相談からどうぞ。